8/6 本日休肝日。グレーマンデーです。
おや、休肝日仲間のてつんどさんから質問がきてるぞ、どれどれ、あちゃー、
これお答えするの長ーい長ーいお話になってしまいます。お覚悟を...
Q:質問です。ワインの裏貼りに「リーファーコンテナ使用(低温管理輸送)」なる
但し書きが書かれていることがよくあるのですが、今どき、温度管理をしていないコ
ンテナで入ってくるワインってあるのですか?つまり、そういったことが書かれてい
なくても、ある程度の温度管理をうけながら輸入されていると私は思っているので、
ワインを買うときには「リーファー云々」に関しては特に気にしていないのですが、
いかがなものなんでしょうか?ちなみに、リラックスが輸入しているワインの裏貼り
にはそういったことは書かれていないですよね。だけど、低温のコンテナでゆるゆる
と海を渡ってきているのですよね。御教示いただければ嬉しいです。
A: はい、当然すべてリーファーで運んでいますってウソついちゃえば簡単なんで
すけど...。
でもウソはやっぱしいけませんよね。てつんどさん、カミングアウトしてしまいま
しょう。
世界的にみてワインをリーファーコンテナで運ぶ国ってほとんど日本だけってことは
あまり知られていません。今から約20年前、ちょうど私がワイン業界に入った頃は
確かに熱劣化したワインが多数市場に出回っていました。10年くらい前からでしょ
うか?ワインが熱劣化するのはヨーロッパからの船便は赤道を2回通過するため船上
でコンテナが高温状態になるからだという説が唱えられました。またワインの輸入業
者同士でも、あそこの会社はリーファーコンテナを使用していないから品質が悪いな
どといった中傷合戦が悲しいことに多々あり、またリーファーコンテナ使用と裏ラベ
ルに表記したワインは売れ行きがよいという考えが浸透し多くの輸入業者がリー
ファーコンテナ使用をうたい文句にするようになりました。
私も以前はワインを輸入するのにリーファーコンテナ以外は考えられませんでした。
ところがです。ある時フランス人の輸出業者に「日本人はワインを運ぶのにどうして
リーファーコンテナなんかを高いお金をはらって使うのか?日本人は変だ。」と言わ
れたことがありました。彼が言うには、リーファーコンテナを使用しなくても、コン
テナを喫水線以下の船底に積み込めば海水温の15度をキープするのは簡単だ、との
ことでした。リーファーコンテナは通常氷点下の温度から摂氏5度程度の温度が必要
な商品に使うものだというのです。また、リーファーコンテナは換気の必要があるた
め船の一番上に積み込むが、そこは船の中で横揺れが一番激しく、海上でワインはゆ
すられっぱなしであり、加えて万一リーファーが故障したりしたら、すぐにコンテナ
内は60度を超えるような状態になって希少価値の高いワインなどは取り返しがつか
なくなるとも言われました。ただし、日本へワインを運ぶコンテナで大切なのは直行
便でなくてはダメだとのこと。シンガポールやマレーシアなどで船の積み替えにあえ
ば、高温のコンテナヤードに放置される危険が高く熱が加わる危険があるとのことで
した。そんな、リーファーを使わなくても平気なんてにわかには信じられませんでし
たが、あるとき試しに一度おっかなびっくりテーブルワインをドライコンテナで運ん
でみたところその品質には全く問題はありませんでした。2度目も全く問題がありま
せんでした。調べてみればS社やM社をはじめ大手ワインメーカーも実際にほとんど
リーファーコンテナは使用していません。どうやら昔多く市場に出回った熱劣化ワイ
ンは海上輸送に問題があったのではなく、常温の国内の倉庫での長期間の滞留や夏場
の荷揚げや国内の陸上輸送に問題があったのだと私自身も考えるようになりました。
今でも海上コンテナはリーファーを使用しているにもかかわらず、国内での輸送・保
管は夏場も常温倉庫といった輸入業者もあるようです。現在カーヴドリラックスでは
例えばマルキドボーランを運ぶ時にリーファーコンテナは使用していません。リー
ファーコンテナを使用すれば運賃だけではなく関税が大幅にアップしてしまい現在の
販売価格より200円程度の値上げが必要になってしまいます。店頭での回転も速
く、購入後すぐに飲むワインであれば全く問題がないと考えています。反対に長期貯
蔵を目的とするようなワインを運ぶ時にはリーファーコンテナを使用しています。す
ぐに飲むワインではありませんから、運んですぐにはダメージがなくても10年後と
かの将来は現状では確信が持てないから念のためです。また荷揚げ時の国内のコンテ
ナヤードでの滞留が心配なため夏場に輸入するワインも必ずリーファーコンテナを使
用します。私はワインの保管倉庫は横浜・大黒ふ頭のFAZというコンテナの荷揚げ
場に隣接する定温倉庫を使用し、店への物流も牛乳屋さんのお古の冷蔵トラックを安
く譲り受けて使用しています。さらに付け加えれば夏場はヨーロッパだって暑いわけ
で、その場合現地でもトラックもプラグオンといってリーファーコンテナのスイッチ
を入れて運んでいますが、それでもやっぱし心配なのでなるべく夏場の輸入はお休み
するようにしています。必要最低限のワインのみリーファーコンテナで運びます。ま
た、既に飲みごろを迎えている稀少なオールドヴィンテージものを運ぶ時などは、必
ず航空便を使用しています。航空便は温度が低くなりすぎるという人もいますが、わ
ずか数時間のことですので、ほかの運び方より品質に対するリスクは低いと判断して
います。長くなりましたが、リーファーコンテナを使わないなどというと、これでも
まだ誤解を受けるかもしれませんね。輸入業者同士でもいろいろな意見があるのも承
知しています。
「あそこはリーファー使ってないんですよ。だから安いんですよ。安けりゃいいって
もんじゃないですよね。」
ああ、また幻聴が聞こえてきました。
この機会にカーヴドリラックスはこれからも常にワインの品質管理には万全を期して
いくことお約束いたします。同時に少しでも合理的にワインの輸入を行いたいとも考
えています。もちろんコストの下がった部分は販売価格で還元いたします。お安くし
ときますです、てつんど様。